YouTubeにアップロードされていた梅田さんと吉岡さんの対談を見た。面白い対談だったと思うし、長年グーグルやシリコンバレーのウォッチしてきた梅田さんの観察は大部分、的を射ていると思う。
しかし、1つ意外な点があった。この対談のテーマの1つであったオープンソースについての受け止め方で、それが「あれっ?」と思わせるものだったからだ。
対談の中では1998年にNetscapeのソースコード公開がオープンソースムーブメントのさきがけであり、その前の「伽藍とバザール」がそれへの導火線になっているというような認識だ。
これについては非常に違和感があるし、ははぁ、こういう立場でオープンソースムーブメントを見ているのだなとも感じた。
「伽藍とバザール」にせよ「Netscapeのソースコード公開」にせよ、これらはビジネスマンや一般の人たちに、オープンソースという何やら得体の知れないソフトウェア開発が行われているということを知らしめたという点で社会的インパクトは大きい出来事ではあったのは確かだが、オープンソースムーブメントがこれによって始まったり、盛んになったわけではないと思う。「伽藍とバザール」で「オープンソース」という言葉が桧舞台に登ったにしても、だ。
ウェブの創生期、ブラウザもウェブサーバーもどちらも今で言うオープンソースだったし、そもそもそこでビジネスが行われるようになったのは後なので製品なんて無かった。全部オープンソースみたいなもんだったのだ。そして、ウェブ黎明期のネットビジネスの多くが(LinuxなどのフリーのOSを使っていたかは別として)、やはりオープンソースのソフトウェアをフル活用していた。
ネット企業におけるオープンソースソフトウェアの話と、それ以外の分野のオープンソースソフトウェアの利用ではその捕らえ方が大きく違う。
それを鑑みると、吉岡さんの視点は「企業向けのソフトウェア開発で、オープンソースソフトウェアが利用できるようになった」という視点に見えたし、シリコンバレーで働いていたとはいえ、オラクルというパッケージソフトウェア企業のエンジニアにはそう見えたのか、我々とはちょっと違う感じ方をされていたようだ。
確かに当時感じていたことを、反対の立場から見ていたのかもしれない。開発者が「オープンソースの方を使ったほうが、よっぽど手間が掛からないのに」と思っているとき、会社の人たちは「お金を払わないソフトを使って、何かあったときに誰がサポートしてくれるんだ?」なんていっていた。その流れが変わるきっかけはこの2つの出来事だし、オープンソース開発で飯が食えるようになったのも、これらのお陰だ。
では、なぜインターネットビジネスではオープンソースを使ったのか?
それは、インターネットがUNIXカルチャーで育ったものだったからだ。そして、UNIXカルチャーではソフトウェアはフリーであるものという暗黙の前提だったからだ。
インターネットでサーバーを走らせようと思えば、UNIX系を使うのが一番簡単で安定していたし、
ウェブサーバーの中で簡単に安定して走らせられたのも、後発の商用製品ではなくて、この分野を切り開いたフリーの、今で言うオープンソースのウェブサーバーだった。そして、その開発者たちはみんな大学で、UNIXカルチャーの中で育ってきた人たちだったのだ。
タダで、安定していて、みんなが使っているソフトウェアを使って、ネットのサービスを作るのが、一番安くて、自分達がうまく作れる方法だったのだ。そして、(梅田さんが触れているが、)その使い方ではオープンソース利用の際の制限である、コード再配布の問題が発生しないという旨みもあった。逆に言えば、後発でユーザーも少なく、どこの誰だかわからん雇われプログラマーが開発した商用ソフトなんて、安心して使えないし、問題がおこったときに最後は非公開のコードの中で、なぜか分からないが問題が起きる、となった場合に手も足もでなくなって困るというのが、商用ソフトウェア活用のネックになってきた。
スタートアップでは、開発者=会社の創業者だったり、初期のメンバーだったわけで、オープンソースの価値のわからないひとを説得する手間が省けたし、開発者の間では、オープンソースソフトウェアのノウハウが蓄積されていたから、それで作れば開発者も効率よく仕事ができた。gccのノウハウはみんな知っていても、他のコンパイラのことを知っているとは期待できない。Apacheのチューニングはみんな出来ても、Netscapeのサーバーは使ったことがある人は一握りだった。
そして今、そういったネット企業であるグーグルやアマゾン、そして後続のネット企業がソフトウェアを開発し広告で食っていくことが可能になった。それを支えるのがオープンソースの技術であって、それが注目を浴びるのもその結果でしかないと思う。
これを投稿する寸前に、梅田さんの「
オープンソースが生む潮流」を読んで、なあんだしっかり書いてあるじゃん、と思いつつ、対談を見たところではそう感じた、ということでそのまま投稿する。
オープンソース全般の話と、Linuxがプロジェクトとして成功した話、スクリプト言語による開発の話をひとまとめにするからおかしな感じになるのかもしれない。
猫熊